光を背負う、僕ら。―第2楽章―




「この前、どうして抱き締めたりなんかしたの?“ごめん”って、どういう意味で言ったの……?」




ずっと聞けずに燻っていたことを、ようやく言うことが出来た。



瞳は伸一の姿をしっかりと捕らえて離さない。



伸一は固く思い詰めた表情のまま動かずにいたけど、フッ、と突然自嘲を浮かべた。



そして床に散らばったまま放置されていた写真を素早く丁寧に拾い集めて、ゆっくりと立ち上がる。



あたしも立ち上がって、窺うように伸一の顔を見上げた。




「俺、麻木に謝ってばかりだな……。おまけに悲しませて、泣かせたりもしてるし」




伸一の手から力が抜けて、滑り落ちるように机の上に写真が戻される。


それを視界の端で把握しながら、ずっと伸一を見ていた。




「麻木のこと苦しめたり悩ませたりしたくないのに、空回りばかりするんだ。情けないよな、こんなの。それでも、俺、麻木のこと……」




そこまで言ったところで、唇がきゅっと結ばれる。



伸一は言葉の続きを飲み込むと、目を伏せて首を横に振った。


まるで自分に「言うな」と言い聞かせているみたい。



だからあたしも、その場でそれ以上先の言葉をねだることが出来なかった。


たとえ、いっそ深くまで追求したいと思っていても。



力なく、伸一は椅子に座った。


目で促されるのであたしも席に着くと、さっきよりも目の高さが近くなった気がする。



苦笑いに緊張を含んだ表情で伸一は言った。




「……全部、麻木に話すよ。この前のことも含めて全部」




きっかけの扉が開く。

そのおかげで緊張があたしにも伝わった気がした。