思っていたよりも至近距離で目が合い、身体がびくりと震える。
その拍子に手にしていた写真が見事に滑り落ちて、バラバラと床の上に不時着した。
さらに慌ててそれを拾おうとして立ち上がった勢いで足が机にぶつかってしまい、束になっていた写真が崩れてそれも床にまっしぐらに向かう。
さっきまでの作業の半分ぐらいが、一瞬にして無駄になってしまった。
「ご、ごめん……!」
今度は落ち着いて席から離れて、しゃがみ込んで床に手を伸ばす。
おもむろに伸ばした手は、向かい合って同じようにしゃがみ込み、そして拾おうとしてくれている伸一のそれと重なった。
途端に不慣れなぬくもりに驚いて、素早く手を引っ込めて胸の前に戻す。
咄嗟の出来事だったけど、伸一は心底驚いた表情であたしを見ていた。
しまったと、冷や汗を感じたときにはもう遅く、伸一は泣きそうな苦笑いを下に向ける。
「……わりぃ」
小さな声が悲しげに響く。
伸一にそう言わせてしまったのは自分だというのに、胸の奥は好き勝手に疼き出した。
痛みは慢性化することなく、全身により強さを増して広がっていく。
「……どうして」
「え?」
「どうして、佐藤君が謝るの?謝ってくれるだけでは何も分からないよ……」
話が突発すぎて、きっと伸一は分かっていないだろう。
あたしだって何をどう伝えたらいいのかよく分かっていないぐらいだし。
でも噛み締めていた唇を一度開けば、嫌でも言葉が音を宿して声になる。
「あたしは別に、佐藤君に謝ってほしいわけじゃないよ。ただ……佐藤君の気持ちが知りたい。いつもそれだけなの」
――もう、謝らなくていいから。
中途半端な優しさも要らないよ。
ただ伸一の気持ちが知りたい。
あたしに黙ったまま一人で抱え込むわけでも、謝ってくれるわけでもなく、ちゃんと向き合ってほしいだけなの。



