「……ひっく、ありがとう、佐奈ちゃん」
しばらくすると落ち着きを取り戻したらしく、細い指で小春ちゃんは目尻に残った涙を掬った。
少し赤くなった目だったけどすっきりした表情で笑ったから、あたしもやっと安心する。
「……ほんと、今さらだよね。伸一の優しさに今気付くなんて」
「……」
「あたし、自分のことでいっぱいいっぱいだったんだね。伸一に嫌われたりするのが怖くて、顔色ばかり窺ってたもん。それじゃあ、本当の優しさに気付けるわけないよね」
自嘲した笑みを浮かべて遠くを見つめる瞳が、ゆらりと揺れているみたいだった。
「自分の片思いだって思い込んだままじゃなくて、ちゃんと伸一の気持ちにも向き合ってたら良かったなぁ……。そうしたら、別れることもなかったかも」
「小春ちゃん……」
哀愁が漂う表情に、窓から差し込んできた夕日の光の筋が重なる。
不思議なくらい綺麗に見えるその光景に、息が詰まる気がした。
窒息してしまいそうな感覚に反応して、苦し紛れに声が出る。
「……ごめんなさい。二人が別れたの、やっぱりあたしのせいだよね」
スカートの上に置いていた拳がぎゅっと丸くなって固まる。
あたしが関わらなければ、二人はずっと付き合っていたのかもしれない、と。
そう簡単に想像出来ることが苦しくて、まともに小春ちゃんを見ていられなくなった。



