「あの頃あたし、佐藤君からたくさん小春ちゃんの話を聞いたよ。ちょっとした思い出話もしてくれて、いつも幸せそうだった。それに“小春は頑張り屋だけどときどき不安そうにしてる。だから俺が支えになれたらいい”って、誇らしげに言ってた。だからあたし、二人は相思相愛だなって感じてたの。すごくお互いのことを想い合ってるって、見て感じ取れたし」
小春ちゃんのことを話してくれるとき、伸一の顔は悔しいぐらいに輝いていた。
やっぱりあたしは敵わない。
そう何度も実感させられるぐらい幸せそうだったから、ずっと二人が羨ましかった。
だから分かるよ。
伸一はちゃんと小春ちゃんのことを好きになっていたし、大切に想ってた。
「佐藤君は、優しさだけで付き合ってたんじゃないと思う。少なくとも付き合っている間に、小春ちゃんのことを好きになってたよ」
「……うん。そう、だよね。そうだったっ……」
小春ちゃんは小さく何度も頷いたあと、両手で顔を覆った。
震えている手のひらに涙が吸い込まれていった気がする。
「……そうだよね。伸一はちゃんと、あたしに向き合ってくれてた。でも佐奈ちゃんに言われるまで、それに気付かなかった。あたし、馬鹿だよね……」
小春ちゃんの言葉は嗚咽混じりで、すごく弱々しかった。
あたしから見た二人は両思い。
でもその理想的な姿の裏側で、小春ちゃんはこんなにも悩んでいたんだね……。
小春ちゃんはさっきの言葉を最後に嗚咽で何も言えなくなってしまう。
だから落ち着くまでずっと、あたしは華奢な背中を擦っていた。
なんだか、複雑な気分だ。



