小春ちゃんの声は、静かに空気を震わせる。
「放課後に学級委員の仕事を終えてから、気持ちを伝えたの。伸一、心底驚いたって顔して。それから……戸惑ったように笑ってた。だからあたし、その瞬間に分かっちゃった。あぁ、この人はあたしに恋愛感情はないんだって」
「……」
「だけど伸一ね、“ありがとう”って言った。それから“付き合おうか”って言ってくれたの。だからびっくりした。だってあたしが告白したときに戸惑った表情に、あたしを好きだっていう気持ちはなかったから……」
「でも、付き合うことになったんでしょう?」
何気なくそう尋ねたつもりだったのに、きっと情けない顔をしていたのだろう。
小春ちゃんは申し訳なさそうにあたしを見て頷いた。
「……うん。馬鹿みたいだけど、それでも良いって思った。好きな人が自分の気持ちを受け入れてくれた気がして、舞い上がってた」
でも、と。
小春ちゃんの視線と声が下に向く。
小さな後悔が、彼女を支配している気がした。
「付き合ってみて分かったよ。やっぱり伸一は、あたしを好きで付き合ってくれたんじゃなかった。……たぶん、彼なりの優しさだったんだろうね。きっと誰とも付き合ってなくて、ましてや好きな人もいなかったから付き合ってくれた。そんな感じ」
自嘲気味に笑う声が、とても虚しかった。



