……それに、東條学園の体験入学でも。
あたしに演奏するように勧めてきた。
すっかり口車に乗せられてピアノを演奏したわけだけど、あれも小春ちゃんの細工だったのだろう。
あたしはこうやって幾度となく、小春ちゃんに試されていたんだ。
思い当たった出来事を告げると、小春ちゃんは苦笑して「正解」と言った。
「さすがに気付かれてたよね……。ごめんね、色々試すようなことしちゃって」
「全然いいよ。おかげであたしも、ピアノを弾くきっかけになったし」
「そう言ってくれるなら良かった。こんなことを言うのもあれなんだけど……。もし佐奈ちゃんが体験入学のときに弾いてくれなかったら、そのときは問い詰めようかと思ってた」
「……」
「勝手な考えだけどね。あたしにピアノの楽しさを教えてくれたのに、その本人がやめちゃってるなんて許せなかった。それに初めて会ったコンサートで佐奈ちゃんの演奏を聞いたとき、すごく上手いと思ったの。もっと聞いていたいって思えるピアノだった。だからあたし、佐奈ちゃんのライバルになりたかった。この子に追い付いて、いつか追い越したい。でもまた追い越されて、また追い越すために努力したい。そうやってお互いを高め合う関係になりたかったの」
熱の籠もった瞳で見つめられる。
それはピアノに真剣に向き合う者の証で、あたしの胸の中にある熱いものに火がつけられる。



