あたしが考えていたことが伝わったのか、小春ちゃんはあたしの顔を見て控えめに笑った。
「佐奈ちゃんの言葉を聞いてからね、あたしはあたしらしい音楽を奏でようって思いながら弾くことにしたの。そうしたら何だかスッキリした音が出せるようになって。これがあたしの音楽なんだなーって思ったら、背伸びしてお母さんの演奏の真似をするのが良いわけじゃないって気付けたの。このコンクールの演奏もね、今までで一番良い演奏が出来たんだ」
「……そっか」
開かれたままのアルバムの写真を、小春ちゃんは指先で優しくなぞった。
まるで殻を突き破り、一歩前進した瞬間の自分を褒めているみたい。
その表情がとても穏やかで、あたしはとても嬉しくなった。
小春ちゃんの隣で写っている幼いあたしはこれからつらく苦しい期間を迎えることになるのだけれど、そんな彼女に伝えてあげたい。
あなたの言葉で成長している女の子がいるよ。
そしてあたしもその子と同じように、高みを目指して今もなおピアノを弾いているよ。
だから踏ん張って、ここまでおいで、と。



