……ほんと、あたしとは逆なんだな。
弾きたくても、ピアノに触れることさえ出来なかった。
小春ちゃんはそんなあたしとは見事に違う幼少期を過ごしてきたんだ。
「……もしかして、今もピアノが嫌いなの?」
思わず気になって口がそう言葉を紡いでいた。
コンクールでも優勝して、同じように東條学園への入学を目指している。
そんな今でもピアノが嫌いだなんて思えなかったし、そうであって欲しくないという思いで返事を待った。
小春ちゃんはそんなあたしの気持ちに気付いたのか、ふわりと笑った。
「言ったでしょう?嫌い“だった”って。嫌いだったのは小学校に入るまでの話なの。今は大好きだよ。言葉では表せられないぐらい」
「……そう、なんだ」
ホッとしてため息が出る。
小春ちゃんが奏でる綺麗なピアノの音色に嫌々な気持ちが混ざっていないのは、素直に嬉しかった。
小春ちゃんの音は本当に素敵であたしも憧れている。
それが小春ちゃんが素直にピアノを好きな気持ちで奏でているのなら、同じピアノが好きな立場として嬉しいんだ。



