「信じられないって思ってる?」
「う、うん…。だって小春ちゃんのほうが、あたしにないものをたくさん持ってるから」
「そうかな。あたしにとって欲しいものは、佐奈ちゃんのほうがたくさん持ってるよ」
小春ちゃんはそう言うと膝を抱えた。
その姿が普段の堂々とした小春ちゃんとは違ってちっぽけに見えたのは、きっと気のせいじゃない。
「佐奈ちゃんがたくさん本当のことを話してくれたから、あたしもちゃんと本当のことを話すね」
小春ちゃんは膝を抱える腕にぎゅっと力を込めて、それから真面目な顔であたしを見た。
「……あたし、最初はピアノが好きでピアニストを目指したんじゃないんだ。むしろピアノが嫌いだったよ。
それと……伸一のことなんだけど。伸一は最初からあたしが好きで付き合ったわけじゃなかったの。告白したのはあたしの方だったし、付き合ってても片思いみたいな感じだった」
そう言って肩をすくめる小春ちゃんは嘲笑する。
あたしは目を見開いたまま、その姿が一瞬幻なのかと思った。
だって今小春ちゃんが言ったことが、全然信じられないの。
そんなわけないじゃんと、自分の耳さえ疑いたいほどだ。
“本当のこと”と言っていたから重大な内容である気はしていたけれど、聞かされたのはそれほど意外すぎることばかりで衝撃が強かった。



