……だけど、どうしてだろう。
あたしは確かに時間の流れに乗って過ごしているのに。
ときどき、まるで自分だけが止まっているような不思議な感覚に陥る。
時間がないと焦っているのに、おかしな話だよね。
だけど、自分でも分からないけどそう感じる。
昨日のあたし、今日のあたし。
一体どこが変わって、何が変わらずにいるのだろう。
変わりたい、と。
強く思えば思うほど、変わることが出来ていない気がする。
先生に頼み込んで始めたピアノの練習。
よく言えば勇気を出したと言えるかもしれない。
…だけど、実際は?
またお母さんと向き合うことから免れたくて、あんなことを頼み込んだんじゃないの?
そう考えると、結局何が良かったのかも分からなくなる。
「……はぁ…」
自分に対してついたため息は、微かに白くなって空に消える。
頼りないちっぽけなあたしの背中を、三日月だけが見守っていた。



