「……うん。俺も、ありがとう」
俯いている真藤君の声はか細くて、風の音にさえのまれてしまいそうだった。
だけど、ちゃんとあたしの耳には届いたよ。
「……さよなら」
小さく呟いて、自ら握手している手を離した。
ぬくもりを失って空気に触れる手が無性に寂しい。
真藤君と離れることで抱く感情は、想像以上に切なくてつらいものだった。
……あたし、真藤君に甘えてすぎてたね。
悩んで迷う度に、真藤君なら答えに導いてくれると思ってた。
だけどそれも、真藤君には重荷になっていたのかもしれない。
いっぱい助けてくれて、本当にありがとう。
そして知らない間に、たくさん傷付けてごめんね。
……絶対に、忘れないよ。
こんなにもあたしのことを想ってくれていた、優しい真藤君のこと。
「さよなら、麻木」
真藤君も決心したように、その言葉を口にした。
瞳が潤んでいるみたいで、あたしもつられそうになる。
鼻の奥がつんと痛くなった。
「……教室行こうか」
真藤君は静かに目を伏せて静止したあと、いつもの声のトーンでそう言った。



