小さく深呼吸をして、一度強く唇を噛み締めた。
それから覚悟を決めて瞼を上げて、真藤君の目を見る。
もう迷いはなかったけど、泣きそうな顔をしている真藤君を見たら胸が熱くなった。
「今まで、たくさん助けてくれてありがとう。あたし、真藤君の優しさに何度も救われたよ。だから短い間だったけど、真藤君と仲良くなれて嬉しかった。
それから、こんなあたしを好きになってくれてありがとう。気持ちには応えられなかったけど、本当に嬉しかったよ」
震える唇が紡ぎ出す言葉は、なんだか泣いているみたいだった。
でも真藤君が泣いてないのに、あたしが泣けるわけない。
カラカラに渇いた喉を潤すために唾を飲み込んで、一呼吸を入れる。
そして、一番大切なことを言った。
「いっぱい……本当にたくさん、ありがとう。今までのこと、絶対に忘れないよ。……さよなら」
さよなら、と言った時、一粒だけ涙が頬を滑り落ちていった。
早すぎて、跡形さえ残らない涙だった。



