「あたしが、好きなのは……」
声が震える。
自分の身体が自分のものじゃないみたいに冷たい。
だけど反対に、心は熱く沸騰している。
……いつだって、そうだった。
ドキドキしたり、悲しくなったり。嬉しくなったり、切なくなったり。
そういう恋の特別な感情を教えてくれたのは、いつだって……。
――『俺、おまえのピアノ好きだけどな』
――『俺が麻木のファン第1号になって、ずっと応援してるから!』
あたしのピアノを、好きだと言ってくれて……。
――『きっと、麻木の好きな人は幸せだな!』
――『麻木みたいな優しい人に想ってもらえるなんて、本当に嬉しくて幸せだって思えたんだ』
あたしの気持ちに、最後まで優しく答えてくれて……。
――『麻木、ごめんな……』
だけど、本当の気持ちは分からない。
そんな人なの……。
「……っ、諦められる、わけ、ないよ……」
“本当の本音”が、やっとあたしの口から姿を現す。
「佐藤君が、好きなの……。諦めるなんて、出来ないよ……」
決断したなんて言葉は、最初から嘘の鎧に過ぎなかった。
本当の気持ちを抱いたままでいると、自分がどんどん嫌な人になってしまいそうで。
それでずっと、伸一と小春ちゃんの幸せを願おうとした。
だけど。



