空き缶とエコバッグが指先から滑り落ちた。地面に着地して、鈍い音が立つ。




「さ、とうくん……?」




涙が瞳の表面から流れ落ちて、最後の日が沈む瞬間が佐藤君の肩越しにはっきりと見えた。




あたし、佐藤君に抱き締められてる……?



そのことを認識出来たのは、午後5時のチャイムが空に響き渡ったときだった。



公園内にあるスピーカーから流れる電子メロディーに促されるように、子供たちがぞろぞろと帰り支度を始めている。



だけどあたしは何故か伸一に抱き締められたまま、そんな公園の一角で固まっていた。



な、なんで?

なんであたし、抱き締められてるの……?



どういう流れでこうなっているのか全然考えられなくて、戸惑いだけが募っていく。




「……ごめん」


「佐藤君……?」


「麻木、ごめんな……」




背中に回されている腕に力を込められた気がして、切なく胸が鳴った。



うわごとのように掠れた声で何度も発せられる伸一の「ごめん」の言葉が、余計に胸を締め付ける。



密着してドキドキしているはずなのに、それ以上にこの光景が悲しく感じられて、また涙が出そうになった。



伸一を跳ね返すことも、抱き締め返すことも出来ない。


行き場がないあたしの腕は、冷えた空気に包まれていた。