「……あっ。麻木……」
ボールを取りにこっちに向かってきた伸一が、あたしの姿を確認して目を見開いた。
そしてそのあとすぐに気まずそうに目を逸らすものだから、ちょっと胸が痛くなる。
久しぶりに向き合っているのだから喜んでもいいのかもしれないけれど、あたしにはそんな余裕なかった。
……まさか、こんなタイミングで伸一に会うなんて。
早く、伸一の前から消えなくちゃ……。
伸一をこれ以上困らせないたもにも、あたし自身のためにも。
足元で寂しげに待っているサッカーボールを両手で広い、伸一に差し出した。
「はい、ボール」
「…あ、あぁ、サンキュ」
「じゃあ、あたしは……」
「――麻木!」
足早に去ろうとすると、伸一に名前を呼ばれて言いかけたことが引っ込んでしまった。
伸一の表情を確認しないで済むように逸らしていた視線を、恐る恐る伸一の顔に向ける。
……いつからだったっけ。
伸一の顔が見上げないと見えない位置になったのは。
心臓がダッシュしたあとみたいにうるさく鳴っているのに、そんなことを考えていた。
「……ちょっと、話さねぇか?」
真剣な顔付きでそう言った伸一に、あたしは気が付くとただ首を縦に振っていた。
離れなくちゃいけないという思いは強いけど、伸一の眼差しはそれ以上に強かったんだ。



