「…そういえば麻木、時間大丈夫か?」


「えっ?……あ、まずい!もうこんな時間だったんだ」




真藤君に促されて時計を見ると、時刻はもう16時30分。



あたしはあれから毎日、17時からお母さんとピアノのレッスンをすることになっている。



だから学校から自宅までの距離を考えると、もうそろそろ帰らなくてはいけない時間だ。



慌てて開いていた教科書やノートを閉じて、片付けを始める。




「いつもごめんね。あまり一緒に勉強出来なくて」


「別にいいよ。一緒に勉強したいって無理矢理頼んだのは、俺のほうだし」




真藤君は気に留める様子もなくそう言ってくれる。



だけどなんとなく申し訳ない気持ちは消えなくて、苦笑を浮かべた。



カバンに筆記用具を詰め込んでいると、真藤君が少し椅子の音を立てて立ち上がった。




「……送ってく」


「え、いいよ。毎日悪いし。真藤君はもう少し残っていけば?」


「今日はもういい。課題も終わったし」




テーブルを見ると、真藤君のノートには課題の問題がびっしりと記入されていた。



あたしに教えつつも課題を終わらせるなんて、なんて要領がいいんだろう……。