あたしの言葉をしっかりと記憶するように、時折頷きながら真藤君は聞いていた。
一番言わなければならない言葉の前に、再度深呼吸をする。
震える声で、言葉を繋いだ。
「真藤君には、本当に感謝してる。
――だけど、ごめんなさい。真藤君の気持ちには、応えられない……」
申し訳ない気持ちから真藤君の顔を見ることが出来なくて、お辞儀の体勢で頭を下げた。
視界に真藤君の上履きが入り込んで、ぎゅっと胸が苦しくなる。
散々悩んで辿り着いた決断なのに、どうしても辛い気持ちでいっぱいになった。
もっとも、一番辛いのは真藤君ではあるのだけれど。
……誰も傷付くことのない決断があるのなら、あたしだってそれを選びたかった。
でもこればかりは気持ちの問題だから、どれだけ考えたってそんな決断には巡り会えない。
ましてや嘘をついて決めたとしたら、それこそ誰かを傷付けるものとなる。
だからあたしは、正直に自分の気持ちに従うことにした。
それは結局、真藤君を傷付けるものになってしまったけれど……。



