光を背負う、僕ら。―第2楽章―




「平気な顔して二人の幸せを願えるほど、あたしは強くない。
未練だって残ったままだし、まだ気持ちさえ諦めきれてないよ」


「じゃあどうして、そんなこと……!」




訳がわからないと言うように、真藤君は声を荒げた。



真藤君のその必死さがどこから来ているのか知っている今、なんだかくすぐったい気持ちが胸に流れ込む。



……真藤君は、あたしが傷付かないかって心配してくれてるんだよね。



あたしはするりと軽くピアノをなぞって、真藤君を見た。




「……あたし、思ったの。
どうしても一番手に入れたいものを手に入れるためには、それを取りに行く途中で荷物を軽くしなくちゃいけないって」




ピカピカに磨いたピアノ。

撫でるたびに、愛しさが増していく。



あたしが一番手に入れたいのは、“ピアニスト”という夢の実現だ。




「今回のことで実感したの。あたしの夢は、生半可な気持ちで手に入れられるものじゃない。
ただでさえ人より出遅れてるのに、これ以上余計な感情に邪魔されてちゃいけない。
だからあたしは、荷物を軽くするの」


「……それはつまり。麻木は夢を叶えるために、“伸一への気持ち”をいらない荷物として置いていくってわけ?」




確認する声に、静かに頷いた。