光を背負う、僕ら。―第2楽章―




「…あたしは、佐藤君の幸せを願ってる。二人が幸せそうにしているところを見て、改めてそう思った。
だから……決めたの」




……思い出は、消えない。


だけど、それを過去に変えることは出来る。



ずっと胸の中にしまっておくことだって、きっと可能なはず…。




「…あたしはもう、これ以上何も望まないことにしたんだ」




思い出は、色褪せないまま。

幸せは、ただの記憶として。


――…全部、ここに置いていく。



伸一と二人で過ごしたこの部屋に、綺麗なままで閉じ込める。



いつか笑って思い出せる、そんな過去にしていくために。





「……おまえ、それ本音なわけ?」




瞼を伏せると、真藤君の声がやけに痛く胸に響いた。



真藤君の言葉は、いつだってストレートだ。



真藤君を見ないまま、静かにその声を聞く。




「麻木、言ってたじゃん。伸一のこと、諦めないって。
それなのにあいつが幸せそうにしてるところ、平気で見てられるの?」


「……見られるわけ、ないよ」




そう言って、ゆっくりと顔を上げる。



射るような瞳をする彼に、ぎこちなく微笑みを向けた。