…放課後を告げるチャイムが鳴ると同時に、二人は急いで肩を並べて教室を出ていった。
多分、小春ちゃんのピアノのレッスンに遅れないように足早で帰っていったのだろう。
さりげなく小春ちゃんの手を引いた伸一の笑顔は、嫌というほど脳裏に強くはっきりと刻み込まれている。
…本当は、分かってたよ。
伸一がメモ用紙をこの部屋に残していった時点で、そんな予感はしていたんだ。
あのメモに伸一が託した気持ちがあたしに伝わったことで、二人に必要だった答えは出た。
――あれが、あたしに対する伸一の気持ち。
それが伝えられたことで、もう二人がこの部屋で一緒に過ごす意味はない。
あたし達は最初から、ただの“クラスメート”だったのだから……。
「…あたし、これで良かったと思ってるんだ。
だって、佐藤君と一緒にいるべきなのは小春ちゃん。
だからあの人は、最初からここにいたらいけない人だったんだよ」
――思い出は、消えない。
伸一と過ごした時間をなかったことには出来ない。
だけど――。



