「…なんだか佐奈ちゃん、雰囲気変わったわね」
「えっ?」
「以前より、力強い印象を受けるわ。それになんだか……すっきりしたって感じ」
不思議そうに言った先生の言葉に、心臓がドクンと音を立てて驚いていた。
…心当たりが、あるから。
「…先生って、目敏いですね」
「えっ?何て言ったの?」
「……いえ、何でもないです」
ボソリと呟いた言葉に反応する先生に、笑顔を向けてさらりと受け流した。
「そう見えるのはきっと、今回のことで色々と吹っ切れたからだと思います。今はただ……前を向いて頑張ろうって決めたんです」
ピアニストへの夢。
伸一への想い。
真藤君からの告白。
どれに対しても、前を向いて頑張る。
……たとえそれが、辛いことであったとしても。
それがこの数日間で出した、あたしの決断だった。
◇◆◇◆◇
「……よし!これぐらいでいいかな」
ほうきでかき集めた埃をちりとりに乗せて、音楽室を見渡した。
積み上げられた段ボール箱や机の表面から灰色のベールは消え、本来の色を取り戻している。
ほんの数ヵ月だったけどたくさんお世話になったピアノも、いつもより輝きを増した姿でそこにあった。



