お母さんは演奏の間に瞼を伏せていたらしく、ゆっくりとそれを開いた。
自分と同じ形をした瞳がこちらをしっかりと見る。
やがて、お母さんは決心したように口を開いた。
「…佐奈の気持ちは、よく分かったわ。ちゃんと、私の心にも響くメロディーだった」
「じゃあ……あたしの夢に、賛成してくれる?」
ぐっと唾を飲み込んで、お母さんを真っ直ぐ見る。
その瞬間……
――お母さんは、笑った。
春の穏やかな風が吹いたときみたいに、ぬくもりが身体を覆う。
「……えぇ、いいわ。あなたの夢に賛成する」
その言葉を聞いた瞬間、思わず両手で顔を覆った。
温かい涙……嬉し涙が、手のひらに落ちていく。
「…っ、本当に?本当に…夢を追いかけても、いいの?」
ずっと、ずっと。
ピアノを弾くことを禁止されたときから、ずっと遠ざかってしまった夢。
一度ははっきりと反対されてしまい、さらに許されないものにもなってしまった。
……だけど今、お母さんは『賛成する』と言ってくれたの?
今まで散々許してもらえなかったこともあり、ちゃんと聞いたはずの言葉も信じがたかった。



