……そこからはもう、何が起きていたのか分からない。
だって真藤君の手が、しっかりと両目を塞いでいたから。
……どれぐらい、そうしていたのだろう。
目を塞がれたまましばらく呆然としていると、二人の幸せそうな会話が聞こえていた気がする。
ただ意識がしっかりと働いていなくて、どんなことを話していたのか分からないけれど。
そしてまたしばらくすると部屋の扉が開き、足音が重なり合いながら遠くに消えていった。
二人分の気配がなくなった部屋はまた、静けさを取り戻す。
「……やっと行ったか」
その言葉と共に視界が自由になり、ロッカーのドアも真藤君によって開かれる。
外と中の気温にはだいぶ差が出来ていたらしく、開いたドアから流れ込んでくる空気はとても冷たく感じられた。
それは本来の気温を忘れて汗をかいた体を冷やすだけでなく、心にまでダメージを与えているみたいだ。
……心なんて、今にも凍ってしまいそう。



