だけどあたしの胸の苦しさは、伸一が小春ちゃんに一歩歩み寄ったことで別のものに変わる。
「…俺だって。おまえと一緒にいられなくて寂しかったんだよ」
伸一は小春ちゃんの瞳から溢れた涙を拭い、髪の毛をかき分けた。
見つめ合う二人の距離がぐっと近くなった気がして、あたしの心臓が危険信号を鳴らし始める。
ま、待ってよ……。
このままだと二人が……目の前でキスしてしまう。
ドンドンとまるで大太鼓を叩くように身体中に響く鼓動の音が、さらに速さを増した。
近付く二人の顔。
うるさい不協和音。
見たくないなら目を塞げばいい。
それは分かっているのに目はしっかりと二人の姿を捕らえて放さない。
嫌だ……こんなところ見たくないのに。
――イヤっ!
目を閉じた状態で、ふたつの唇が触れるわずか一秒前。
最後の抵抗でなんとか顔を動かそうとしたら……
ぬくもりが
あたしの視界を閉ざした。



