「あの、伸一…」
「ん?」
「……キスして」
恥ずかしそうに頬を火照らし、潤んだ瞳が伸一を見据えた。
ロッカーの中は蒸し風呂みたいな蒸し暑さで満たされているはずなのに、あたしの体温はどんどん下がって冷えていく。
今見ているものがすべて、夢だったらいいのにと願った。
だけど伸一の声がしっかりと耳に届き、そう願うことさえ許されない。
「…な、何ふざけたこと言ってるんだよ」
戸惑い焦ったように伸一が反応しても、小春ちゃんの瞳は揺らがなかった。
「ふざけてない……本気だよ」
「そう言われてもな…。つか、何で急にそんなこと……」
「だって最近会うことも少なくて、全然してないから……」
小春ちゃんはしっかりと伸一の手は握っているものの、さすがに恥ずかしさに限界が来たのか徐々に下を向いていく。
「一緒に帰ることも出来なくて、あたしずっと……寂しかったんだよ?」
次に顔を上げたとき、伸一の姿を映す瞳は微かに涙で濡れていた。
悲しげな表情に、伸一だけでなくあたしまで胸が締め付けられそうだった。



