「…ところで伸一、こんな部屋に何の用で来たの?ここって普段は使われてない部屋でしょ?」
一番恐れていた言葉が三人の動きを止めた。
わずかに見える伸一の横顔は、まるで静止画のようだった。
周りの空気も音も、すべてが同じように感じられる。
何も出来ないあたしと真藤君はただ息を飲み込み、伸一の言葉を祈るように待った。
……伸一、どうするの?
不安げに伸一を見る。
あぁ、と伸一が重い口を開く気配がした。
「…何でもねぇよ。たまたま隣の資料室に来たらこの部屋の扉が開いてて、入ってみただけだから」
伸一は苦笑いを浮かべると、小春ちゃんの視界にピアノが入らないように体で隠した。
多分、あたしの荷物に気付かれないようにしてる。
「そうなの?でも何で、使われてない部屋の扉が開いてたんだろう…」
「さあ?この部屋に来た先生が鍵かけるの忘れてて、扉も開けっ放しになってるんじゃねぇの」
不思議そうに首を傾げる小春ちゃんに伸一はしらを切る。
あくまでも秘密を守ろうとしてくれる伸一に、あたしは嬉しい気持ちでいっぱいだった。



