真藤君は明らかにさっきまでとは違い動揺していた。
その雰囲気にあたしもよからぬ気配を感じ取り、暑さによるものとは別の汗が額に浮かぶ。
誰が……ここに来るの?
疑問ばかりが浮かんでいると、パタパタというはっきりとした足音が耳に伝わってきた。
そしてすぐに、この部屋の扉が勢いよく開く。
「…あっ!やっと見つけた!」
間もなく聞こえたのは、嫌味を持たない高い声。
その声の人物が視界に入った瞬間……息が止まるかと思った。
どうして、この人が……。
伸一に近付いて躊躇いもなく腕を掴む小春ちゃんを見て、微かに手が震えた。
伸一が焦った様子で口を開く。
「こ、小春!?おまえ…なんでここにいるんだ?今日もピアノの練習があるから先に帰るんじゃなかったのかよ」
「そんな不機嫌な顔しないでよ。今日は急に練習がなくなったから、伸一と一緒に帰ろうと思ったの。
でも伸一、すぐに教室からいなくなっちゃって…。
だいぶ探したんだからね?」
「…そうだったのか。
わりぃ、さっきまで部活に顔出してたんだ」
「知ってる。さっきグラウンド覗いたら、ちょうど終わって伸一が移動するところだったから。
それでそのあとを追ったんだけど、この校舎に入ったところで見失っちゃったの」
何気なく言った小春ちゃんの言葉に、伸一の顔がしかむのが分かった。



