伸一が何を考えてここに来たのかが分からない…。
時間を遅れて来た目的が謎であるために、伸一の意図がまったく掴めなかった。
だけどその一方で少しだけ嬉しい思いが込み上げてくるのも確かだった。
…来てくれた。
この部屋に、伸一が来てくれた。
その事実だけが以前と変わっていなくて、今はもうそれだけで十分だよ。
息を殺しているとふと、ロッカーのドアの隙間から外の様子が見えることに気付いた。
完全に閉まりきっていないドアの微かな隙間から、片目だけで覗き見る。
ちょうど足音が止まって不思議に思って見ると、伸一はピアノの横に立っていた。
伸一の視線の先には置きっぱなしの楽譜とあたしの荷物がある。
あ…しまった…。
荷物隠すの忘れてる。
伸一が不思議そうに荷物を見ているので少し焦りだしていると、真藤君がこっそりと耳打ちした。
「大丈夫だ。俺の荷物は隠してあるから、あいつはおまえが部屋を留守にしてるとしか思わねーよ」
確かにどこを見ても、真藤君が持ってきたはずの荷物は見当たらなかった。
どうやら隠れる前に荷物を移動させていたらしい。
その判断力には感心するけれど……。
出来ればあたしの荷物も隠して欲しかったよ。



