なんだかあたし、違う意味でつらい気もするけど…。
とりあえず体が少しでも離れてくれたことに、こっそりと安心した。
だけどその直後にガラッと扉が開く音がして……、身体の温度が一気に下がった気がした。
「絶対、大声出すなよ?」
耳元で囁かれて冷や汗が背中を伝い、頷いて返事をする。
多分、その動きは見えていないだろうけど。
今はただ言われた通りにして、息を潜めることだけに集中した。
耳を澄ますと、足音が部屋の中央にまで動いていくのが分かった。
「…いねぇのか…?」
伸一…。
足音の主が発した声で、予想が的中していたことを知る。
伸一の声を聞いてドクンドクンと心臓が焦りだしていた。
多分あたしの姿を探している伸一は、部屋の中を動き回っているみたいだ。
途中で二人が隠れているロッカーの傍まで足音が近付いてびくびくしたけれど、足音はすぐにピアノの辺りに移動する。
伸一の気配を感じとる胸中はとても複雑で、葛藤する思いが交錯していた。



