耳を澄まして聞こえるのは、そんな普段から聞き慣れたものばかり。
ここは居れば知っている音だけで、足音なんていう小さな音などちっとも聞こえてこない。
「ねぇ、足音なんて聞こえな…」
「しっ!一瞬だけ止まったんだよ。…また動き出した」
何かを探るように表情を険しくする真藤君を見て、やっと事態の意味を把握した。
聞こえる足音。
恐らく目指す場所は、ここ。
それは……誰なの?
この場所を使っていることを知っている人物は、あたしを含めて六人だけだ。
あたし。
鈴木先生、明日美、流歌。
目の前にいる真藤君。
――あとは、あの人だけ。
足音の人物として一番に予想出来たのは、伸一の姿だった。
伸一が、ここに来るの…?
いつもの時間をとっくに過ぎた今になって来るなんて信じられなかったけど、どうしてもそうとしか考えられない。
あたしと真藤君の考えは一致しているらしく、目が合うとお互い困惑した表情になった。



