「…おまえが言いたいことは、なんとなく分かった」
ポンっと頭の上に大きな手のひらが乗せられた。
昨日抱きよせられたときに間近で感じた腕と同じで、安心感を与えてくれるものだった。
だけど子供扱いされているみたいなその手つきに恥ずかしさを覚えて、すぐに振り払う。
ありがとうと言うように、優しい手つきで。
そんなあたしの動作を見て真藤君はフッと笑う。
だけどすぐに、やけに真剣な顔つきになった。
「…おい。誰か来るぞ」
「え?」
ただならぬ様子と声に、落ち着いた心がざわついた気がした。
さっきまでとは違う意味で空気に緊張が走る。
真藤君は動きを止めて耳を澄ましている。
「来るって…この部屋に?」
「あぁ、多分な。足音の感じだと、ここに来る」
「足音って…」
真似をして耳を澄ます。
人気のない校舎には様々な場所から流れてくる音が入り交じっていて、いち早く聞こえたのは吹奏楽部のパート練習の音だった。
金管楽器や木管楽器の音が折り重なっている。
それらに負けない大きな掛け声は、グラウンドで汗を流す運動部の人たちのものだ。



