「…つうかさ。さっきから話してばっかだけど、これ練習しなくていいの?」
「えっ?」
あたしの姿を写している瞳を見て固まっていると、真藤君が“これ”と言ってピアノを指差した。
ピアノを見ると最初に練習をしようと思って置いておいた楽譜があるままで、何一つ練習が進んでいないこと示していた。
そういえば真藤君が来る前はなんだか集中出来なくて指が動かなかったし、今も真藤君と話してばかりで何も出来ていない。
「俺のことは気にせず練習しろよ」
「気にせずって……まだ居座るつもりなの?」
机から椅子に移動してしっかりと座る真藤君からは、全く帰る様子が窺えない。
「あぁ、まだいるけど?それが何か?」
「何かって……」
真藤君がいると集中出来ないどころか、練習する気にもなれないんだけど…。
「…ふーん。伸一にはピアノを聞かせられても、俺には聞かせられないってわけか」
「いや、そういう意味では…」
軽く図星をつかれて、無意識のうちに目線が泳いでしまう。



