「……二人が言うことは、あたしも一瞬は考えたよ。
でもあのときは、ただ無我夢中に弾いてただけって言うか…。
それが試験に向いてるのかも、よく分かんないの」


「でも、自分で作った曲でしょう?」




明日美が目線を合わせてきたから、それをしっかり見ながら頷いた。



でも、不安はまだ消えない。



あんな気まぐれに。

それも、ピアノが弾けない代わりにと思ってただなんとなく口ずさんだメロディー。



それが、どこまであの世界で通じるのかも分からない。



……だから、不安なの。




「さーっな!
そんなうじうじ、下ばっかり見ないの」



一種の癖のようなもので、知らず知らずのうちに足下を見ていたら。



明日美に両頬を手のひらで掴まれて、ぐいっと上に上げられた。



いつしか明日美が立っていたから、あたしの顔はそれに向かって通常よりも上を見ることになる。



顔を固定されてぽかんとするあたしを、真剣な表情の明日美が見下ろしていた。