「…っ…」




泣きたくないよ、本当は。


失恋して弱っている自分の姿なんて、誰にも見せたくなかった。



だけど本心まで見透かされている彼の前では、それを隠すことはもはや無意味だった。




「…うぅっ…」




流れ落ちる涙を止める方法も分からなくて、あたしは押し付けられている真藤君の胸に自ら強く顔を押し付ける。




「泣きたいときは泣けばいい。落ち着くまで俺が、こうやって隠しておいてやるから」


「うっ…ひっく…うぅー」




優しさに甘えて一度泣き始めると、堰き止めていた心の壁を壊したように、涙はどんどん流れてきた。



あたしはもう真藤君の存在さえも忘れてしまったほどの勢いで、ひたすら泣き続けた。





……不思議だね。



伸一にフラれて悲しいから泣いているのに、閉じた瞼の裏に思い浮かぶのは伸一の笑顔ばかり。



つらいならいっそ忘れてしまって楽になれたらいいのに、こんな状況ではきっとそう簡単には忘れられないね。



伸一、好きだったよ。

ずっとずっと、好きだった。


伸一を想っているだけで、幸せなこともあった。



それに二人で過ごす放課後の時間が、何よりも楽しかったの。




だけど、今は


――ただ、悲しいだけだよ。



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