「俺と麻木は…えっと…」
真藤君と向き合う形となった伸一は、真藤君に迫られて質問に言葉を詰まらせる。
言葉をちぐはぐと繋ぎ合わせる伸一が訴えかけるようにあたしを見て、伸一の戸惑いの意味をやっと理解した。
そうか…。
伸一はあたしとの約束を守ろうとしてくれているんだ。
この音楽室で練習していることは秘密にしてって、あたしが頼んだから……。
「……っ!」
伸一が約束を守ろうとしてくれている今、この場をどうにか出来るのはもう自分しかいないと思い、あたしはずっと固まっていた体に意識を集中させた。
「……わ、忘れ物を届けに来てくれたの!あたしが教室の机に置きっぱなしだったノートに、佐藤君が気付いてくれて…。
それで、届けに来てくれたの」
勢いに任せて出たのはそんな苦し紛れの言い訳だった。
言い訳を見破られたくない思いから、まともに真藤君の顔を見ることが出来ない。
代わりに真藤君の背後に見えた伸一の表情は、あたしの言葉に安堵しているように見えた。



