「あの歌って“好きな人の幸せを願う”ものだろう?俺、そういうのってすげーと思うんだ。ちゃんと好きな人のことを考えられるなんてさ。
自分の気持ちより相手の気持ちを重視するって簡単なことじゃねぇし。
……だから、麻木はすごいよ。俺、麻木が優しすぎるぐらい良いやつだってわかるから尊敬する」
伸一はそう言ったあと、何の悪気もない優しい表情で笑った。
それを見たあたしの体はさっきよりもさらに硬直する。
伸一は褒めてくれているはずなのに、気持ちは逆にどんどん悲しくなっていく。
……そんなこと、伸一が言わないでよ。
あたしがどんな想いであの詩を書いて、どんな気持ちで伸一の前で歌ったなんて知らないくせに……。
それらは伸一が知るはずのないことなのに、思わずそんなことを口に出してしまいそうになる。
伸一は悪くない。
悪いのは、あの曲をわざわざ伸一に披露したあたし。
……気持ちを伝えないと決めた、あたしが悪い。
それでも、伸一に『すごい』とか『尊敬』するなんて言われたくなかった。
あたしはそんなことを伸一に言われたくて、伸一の幸せを願おうって決めたわけじゃないの……。



