光を背負う、僕ら。―第2楽章―




無意識のうちに、伸一の視界にあたしの顔が入らないように俯いていた。



すると一滴の滴が静かに落ちて、スカートに小さな染みを作った。



スカートのチェック模様の一部だけ色が濃くなったのを見て、やっと自分が泣いていることに気付く。




……バカだな。

幸せを願うくせに、泣いてるなんて。



あたしは、好きな人の幸せも願えないほど弱虫だ――。




「……」




だけど今ここで泣いてしまえば、明らかに不思議に思われてしまう。



あたしは鍵盤を見るフリをして俯き続けた。



そして曲が終わるまで息を止めて、必死に涙を堪えていた。






「……っ、どうだった?メロディーとか、おかしなところなかったかな?」




必死の思いで堪えていたおかげもあって涙は止まっていた。



だけど演奏を終えて発した声が思ったよりも震えてしまって、伸一の反応を見るのがなんだか怖い。




「いや、全然おかしくなかった。……ほんと、麻木らしい曲だな」




でも優しい声があたしの心を温めて、顔が自然と伸一の方を向く。