「…あっ、ありがとう。褒めてくれて…」
「礼を言うのはこっちだよ。無茶なリクエストだったのに聞き入れてもらったんだから。
本当にありがとな!」
「……」
伸一はお礼を言うとき、いつもあたしが好きな笑顔を見せてくれた。
たったそれだけのことだけど胸がくすぐったくなって、なんだか幸せな気持ちになった。
……弾いて良かった。
伸一が笑顔になってくれるなら、あたし、何でも出来るかもしれない。
「……ねぇ、よかったらもう1曲弾こうか?この前作ったばかりの曲なんだけど…」
「新曲か?」
「うん。せっかくだから、感想を聞かせて欲しいなって思うの。伸一がよかったらの話だけど…」
「いいぜ!俺でよかったらいくらでも聞くよ」
「ありがとう。じゃあ……弾かせてもらうね?」
……あたしの曲で、君を喜ばせることが出来るのならば。
あたしは、いくらでもピアノを弾くよ。
伸一の笑顔が、あたしの笑顔に繋がっているから――。



