気が付くと、伸一の存在すら忘れてしまいそうなほど、自分の世界に入り込んで歌っていた。
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たとえば出逢いが
二人にとって運命的なものだったら
僕の姿は君の瞳に
強く焼きついていたのだろうか
そんな有り得ることのないことを考えて
今日も君の後ろ姿を追う日々です
寒空の下で 街中を歩けば
笑顔であの人と手を繋いで
幸せを描く君を見かける
その幸せに僕も触れてみたくて
そっと手を伸ばして見たけれど
冷たい風が頬を刺して
僕の思考を遠ざける
どうすれば君に手が届くの
もどかしさよりも
不安や悲しみよりも
どうか僕にも幸せをください
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伸一にリクエストされた曲は体に刻み込まれていたから、すらすらと弾くことが出来た。
詩だって、ノートに書いてあるのを確認しなくてもちゃんと歌える。
……それぐらい、伸一を想って作った曲は特別だから。
「……うん!やっぱりこの曲いいな!
思わず聞き惚れるっていうか、曲の世界に引き込まれる感じがする」
演奏を終えて少し切ない気持ちになっていると、うっとりした声で褒められてハッとする。



