光を背負う、僕ら。―第2楽章―




「麻木は歌うの全然下手じゃねぇって!
それに俺が気に入ったのは“麻木の曲と歌”なんだから、麻木はありのままでいいんだ。
俺は、ありのままが聞きたいから」


「でも、本当に下手だし…」




渋っているあたしに伸一は必死な様子で語りかけてくるけど、やっぱりそう簡単には了承出来ない。



しかも一番歌いたくない理由が“歌詞”ということもあって、余計に歌うことに抵抗があった。



あんな実らない想いを綴った詩を伸一の前で歌うだなんて……なんだか惨めな気がする。



――だけど。




「…いいよ。歌も歌う」


「おっ、さすが麻木だな!サンキュー!」




――あの歌を歌えば、伸一があたしの気持ちを少しでも感じてくれるかもしれない。



そんな浅はかな考えで歌うことを決めてしまうあたしが……一番惨めだ。




「…じゃあ、弾くね」




規則的に並んだ白と黒の鍵盤。


それらに指を滑らせれば、自然と体が動く。



……伸一を想う気持ちが、


激しく切ない刹那のメロディーと

曖昧に閉じ込めた言葉に変わって


……強く、壮大に響いていく。