「そろそろ車乗れよ」
「うん」
黒の車に乗り込む亜清に続き、私も助手席に乗り込む。
エンジンをかけ、窓の方を見ながら「おかえし」と小さく亜清が言った。
「え?」
「で、おまえどこ行きたいわけ?」
「え…あ、アンティークショップ…かな」
「アンティークねえ…好きなの?」
「好きっていうか、興味があって。
行った事はないんだよね」
「へえ。行ってみるか。良いとこ知ってる」
亜清が良いアンティークショップを知っているなんて、意外だったけど、素敵な所に連れて行ってもらえるのは嬉しいな…。
この数年間の事が嘘みたい。
………もしかして、さっきの〝おかえし〟って、あの時の事?
「亜清!!」
「なんだよ、うるせえな」
「さっきの〝おかえし〟って…」
亜清は優しく微笑んだ。
「べっつにー」
昔から変わらないね。
口の悪さも、相手を傷付けない優しさも。
「ありがとう」
「はいはい」
本当、変わらないね。
