私が放った“訂正する”との言葉に、なーんだっとでもいうように姿勢をもとに戻そうとした。肘置きにあった手が離れるくらいに私は続きの言葉を発した。

「動物に危害を加えない人でお願いします」

「・・・は?」

中途半端な中腰のまま彼女の顔は間抜けなものになった。未だ彼女の顔は私の前にある。そんな彼女の顔を見たら一瞬吹き出しそうになった。・・・が、怖いので我慢する。

「・・・その動物にはヒトも含まれているってことかな?」

彼女の間抜けな顔は一瞬だった。すぐにもとの微笑を浮かべた表情に戻っている。感情のコントロールが上手な人なのだろう。しかし、

一瞬でも隙をみせるのは良くないよ。


「んー、私正直他人はどうでもいいんです。人間より動物。あ、動物っていうのは犬とか猫とか、そういうヒト科以外の生き物のことです。まぁ、虫系は省かれますが・・・」

「ふーん。あんた、やっぱりおもしろいね。うん。大丈夫だよ。あたし、動物には優しいから、ね。」

最後の“ね”は私の宝物たち、フーとムクに向けられていた。
そういや、この部屋に入ってから全く声を出していない2匹。2匹で身を寄せ合って怯えながらも私の方を窺っている。

「この子達、賢いね。ずっと心配してあんたのこと見てたよ。時々、あたしや理事長たちのことを威嚇しながら」

笑って2匹に顔を向けている彼女。その笑みには不思議と嫌な気持ちは感じない。頭に血流が戻ってきた感じがする。