「そこでだ。君に専属のメイドを付けようと思っている。これに関しては、拒否権なしだ」
え?拒否権ないの?
「麗羅様がそのようなことがお嫌いなのは十分承知の上での話です。学園内での身の安全を保障する意味でも付き人を付けるべきであると繁様が判断されました」
「身の安全?」
どういう意味なのか、理解が出来ない。
「麗羅様、繁様は、桜様や麗羅様を近江として認知していないわけではありません。今まではほとんど接触なく過ごさせれていたため、お二人が危険に晒される事態になることはありませんでした。
しかし、今回麗羅様がこの学園に入学されたことで繁様との関係に気づく者は多いかと存じます。なにせ桜様はあの風貌でいらっしゃる。社交界では注目の的でした。麗羅様はその桜様によく似ていらっしゃる」
ん?ん~…なんとなくわかる。
近江グループは大きな会社。そんな大きな会社相手に喧嘩を売る者は少ないだろう。しかし、敵がいないわけではない。ましてやここは金持ち集団の巣窟。その数少ない敵が潜んでいないとも言い切れない。いや、必ずどこかにはいるはずだ。
しかし、近江を相手に正面から喧嘩を売るなんて馬鹿、見つける方が至難の業だろう。紛いなりにも私は近江の身内。そして、身体が不自由な私は標的としては最適。すぐに餌にされるだろう。理由は理解出来る。
「不安事項は少しでも少ない方がいいのはわかります。でも、会社の荷物にならないように細心の注意を払って生活しますので・・・、」
「何を勘違いしているかは知らんが、お前が攫われたところで近江には何の痛手もない」
・・私が攫われたところで、近江にとってはどうでもいいってことか。わかってても実際に言われるとつらいな、
「なにせどんなことをしてもお前を取り戻し、その不埒な輩を地獄の底に送ってやる術くらいいくらでも持っているからな」
表情を暗くする私に近江が続けた。
へ?じゃぁ・・・?
「だがな麗羅、そうなったとき傷つくのはお前だ。それだけは避けたいんだ。」
え?それって、私のことを心配してくれてるってこと?
「すまないが、桜はもちろんのこと、麗羅のことを隠す気は一切ない。私の勝手だ。怒ってくれて構わない。しかし、もう2度とお前たちを遠ざけることはしたくない」
そんな風に言われてどう反論しろと?異議を唱えることなんて無理に決まっている。

