私がベッドから降りれるようになって車イスの練習を始めた時

事故のせいで他人に触れられることに嫌悪を抱いていた私は
車イスの練習をしたくなくて
狸寝入りを決め込んでいた


狸寝入りだということは看護師はもちろん
綾那も片桐も皆が分かっていた

そんな私も
気付かれていると知りながらもそれを続けていた

これがただ逃げているだけだということも
このままではダメだということも
頭ではわかっているつもりだった…



その日のお昼にご飯を食べているとき
綾那が言ったんだ



「私が触るのも怖い?拒否反応起こす?」



きっと綾那はこの質問をしたとき
不安と拒絶される恐怖の渦に呑まれていたんだと思う

膝の上で握りしめられた拳は微かに震え
私の返事を待つ間
キュッと結ばれた口元は歯を噛み締めているのか
白く変色していたから…