ダッシュで階段を降り、昇降口へと向かったら、人影が見えた。

ショートカットの髪。
黒ぶちメガネ。
細い目。

言わないでもわかると思うけど、小説の都合上、セリフを言わないと話が進まない。はぁ…めんどくさい…。


「だ、誰ですか?」


私はセリフを言う。そしたら土屋先生が俺だとか土屋だとか言うんでしょ。ベターだなぁ。


「山田だ。」


「誰だよ山田ぁ!!オマエ土屋だろうが!」


びっくりだよ!

まさかの土屋先生がボケたよ!しかもかっこよく立っているのにさ!

ルックスが台無しだよ!ファンが減るよ!

私は土屋先生に向かって蹴りを入れた。しかし、土屋先生は片腕で私の蹴りを受けとめる。


「な!受けとめた!?」


笑う土屋先生。黒ぶちメガネが光る。


「俺をなめているのか?椿。」
い、今、私の事呼び捨てした!?

いつもは川崎さんなのに! なんか今日の土屋先生おかしいよ! どうしたの!!土屋先生! 私は一端足をひいて、今度は助走をつけて回し蹴りを披露した。しかし、土屋先生にまた受け止められた。


「さすが、中学の時は放送部だったな。」


「それ関係ないですよ!もろ文系じゃないですか!!!」


私は無意識に流している冷や汗に驚いた。

何で土屋先生が私の中学時代を知っているの!?私と土屋先生の目が合う。

なんか余裕をこいている土屋先生にちょっとした殺意が芽生えたのは気のせいかな…。

私は土屋先生から距離をおき、足を肩幅まで開き、自然体で立つ。久しぶりだな。こんなに本気で戦うの。


「俺が知らないとでも思ったか?椿がいた中学校は放送部が裏で牛耳っていたって事を。」