「落ちこぼれキューピッド班、か…」


ぼそ、と正樹は班長が言った言葉を呟いた。


〔キューピッド〕

ローマの恋愛の神、ヴィーナスの子
裸で背に小さい翼が生え、弓を手にする子供として描かれる
その矢に射られると恋におちるとされる
(広辞苑より)


そう、正樹はそのキューピッド、つまりは天使なのだ


《貴様のせいで…!私は他の班からバカにされたんだぞ!》


ああだから今日は機嫌が悪いんですねと正樹はため息をつく

正樹の所属する班、通称《恋のキューピッド班》とは
思い人がいる者には両思いに
失恋してしまった者には新しい恋の手助けなど
主に恋愛方面での人間の関わりを仕事とする班である

「班長、過去を悔やんでも前には進めませんよ」
《悔やむ原因をつくっている貴様に言われたくないわッ!》


人員不足じゃなかったら誰が貴様なんぞ使うかボケ!と班長は怒鳴り
ガチャン、と勢いよく音を立て電話を切られた。

少しの静寂の後
ピロン、とメールの着信音が鳴った


「また依頼か…」


正樹は再度溜め息を吐き
今まで歩いて来た道をUターンし、次の依頼者の元へ歩き始めた。