「ぁ、あたし、席外すねっ」
「いいよ、聞いても」
「で、でも…」
「ってか、聞いて欲しいぐらい」
「…」
再び保健室に入り、鍵を閉めた。
それぞれ椅子に座れば、奈津子ちゃんはゆっくり話し始めた。
「あたしさ、婚約者…いるんだ」
「え…」
「…それ、いつ? 小さかった時にもいなかった?」
「うん。その人なんだけど、あたしすっかり忘れててさ。最近になっていきなりでてきて…。
蓮くんにふられてからのあたしだったら、結婚してたかもね。
でも…できない、理由ができちゃった」
奈津子ちゃんは、切なそうに…話した。
「あたし、塾の先生に恋しちゃったんだ」
その言葉には、あたしも蓮も驚いた。
奈津子ちゃんは予想済みだったみたいで、冷静に話を進める。