「れーいっ♪
あのね、あのね!! さっきさぁ、山内がさぁ、階段でこけてた〜」
「なにそれっ!」
桃嘉は、いつも笑顔で話を振ってくる。
小学校の頃から、人見知りのあたしは、あまり仲のいい子がいなかった。
でも…人見知りだけが理由じゃない。
あたしの家は、なにかと転勤が多くて、クラスに打ち解ける時間がない。
だから、中学で…こんなに仲良くなれる友達ができるなんて、思いもしなかった。
「ってかさぁ…もうすぐテストって…早いよー」
「大丈夫でしょ。その分、範囲狭いじゃん」
「怜は頭がいいから言えるんだよっ!!」
でも…桃嘉と仲良くなって、一瞬で…怖くなったんだ。
また…どこか、遠くへ行くことを。
だって、せっかく桃嘉と仲良くなれたのに。
ずっと、
”友達”でいたいと、
強く願っていた。

