異世界転入生

「ライナはもっと上手だね」
「まぁ、毎日乗ってるからね!ユウも慣れたら、すぐ上手くなるよ!」
「…なら良いんだけどなぁ~」

そう言いつつ、ユウは少しずつ降りて行く
ライナは「じゃあ、後でね」と言って、飛び去って行ってしまった

「ふぅ…結構疲れる」
「そりゃね」

ユウの独り言に返答があり、ユウは慌ててそちらを見る

「リーナ先生…」
「何も無しに浮かんでるわけじゃないのよ、魔力を使って浮かび上がってるの
飛行に使う魔力は少ないけれど、今まで魔力を使ったことの無いユウには、結構な疲労感が感じられるわ」
「なるほど…」
「ま、毎日登下校で使っていれば慣れるわ」
「そうですかね…
あの、ところで…浮かぶには浮かべたんですけど、進にはどうしたら?」

ユウの質問に、リーナは一瞬止まる
ユウは首を傾げる

(そっか、親が飛んでるところを見てないし、魔法使ってるところを見てないから、ホントに何も知識無いのね)

普通、入学してくる時点で魔法の基礎中の基礎は知っているものだ
しかし、ユウは魔法の無い世界にいたので、基礎中の基礎も知らないのだ
リーナは一人納得した

「簡単よ、進むイメージをするの
魔法は全てイメージが根本にあるのよ」
「へぇぇ~~」

ユウは、本当に感心して聞いていた
リーナは、不思議な感覚だった
当たり前の事が当たり前じゃない世界
当たり前は世界によって違うのは知っている…自分だって異世界に旅行へ行ったことがある
分かってるつもりだったが、ユウのいた世界はリーナの理解を遥かに越えていた

「1時間目は飛行訓練だから、自分のペースで練習しなさい
分からない事があれば、聞きにおいで」
「分かりました」

今のユウに言えるアドバイスは本当に『自分のペースで練習』しかなかった
もう少し上達すれば、もっと具体的にアドバイス出来るだろうと思いながら、リーナは水晶に乗って他の生徒を見に行った

「へぇ~、水晶に乗っても飛べるようになるんだ…」

ユウはポツリと呟いた

「さて、もうちょい練習するか!」

気合を入れて、ホウキにまたがる
目を閉じ、ゆっくり飛ぶイメージをすると、先ほどと同じように地面から浮きあがる
次に、前に進むイメージをすると、前に進み始めた