「もう消すよ〜」

大きな声でそう言いながら、日直が黒板を消し始めるから、


「あぁ!もうちょっと待って」

と、慌てて言ってみたけれどガヤガヤと賑やかな教室に私の声は思ったよりも小さくて、周りの声にかき消されてしまった。


「あぁ〜、まだ途中なのに」

情けない声を出したら


「寝てる佳奈が悪い」

と愛に言われてしまった。


いや、だってね、この席、魔性の席なんだよ!

冬場のこの時期、晴れの日のこの席は、絶対に眠くなるって!



窓から、お日さまの陽は、ポカポカ当たるし、窓側にずらりと並んだファンヒーターから、温風が吹いてくるもんだから、フワフワと温かくて、心地よくなるって。


おまけに、さっきの古典の授業なんて、子守唄みたいだし。